2) 混在することば
(1) タガログ語、英語、その他の外国語

図5: ゴールを前に記念撮影
Los Amados St. BRG740 Zone80 Malate Manila City
(2003.2.22)
 長い間住んでいるとタガログ語 (※1)が必要となる生活の場面は多々ある。フィリピン人は、アジアの中で比較的英語に堪能な人々といわれている。しかし、話が長時間に及んだり、込み入った内容になってくると、会話の端々にタガログ語単語が出現し、気が付いた時には、タガログ語だけで会話をしているというようなことは、しばしば起こる。母語がタガログ語なのだから当然であり、公用語とはいっても、英語は彼らにとって外国語である。経験的にいうと、上の中産階級のところで述べたように、英語の混在する比率は、話者の経済的な裕福さと比例しているようである。

 メトロ・マニラでは、英語、タガログ語の他にも、外国人と結婚したフィリピン人との間で混ざり合う言語、そしてその外国人が話す母語も聞かれる (※2)。そして次に述べる、英語とタガログ語のクレオール言語は、非常に興味深い。


(2) "Taglish"「タグリッシュ」
 彼らの意識の中には、英語の方が、より正式で文化的に高い、言い換えると「かっこいい」と思う向きがあって、自分がいかに英語に堪能であるかを示すためだけに、つまり英語の腕試しのために、外国人(筆者)に対して話しかけてくる人もいる。また、周囲の人に対し「私は今。英語を話しています」というアピールをするような会話を楽しむ人々も目にする。

 先に述べた、タガログ混じり英語、あるいは、英語のようなイントーネーションを持つタガログは"Taglish(タグリッシュ)"と呼ばれる。基本的な文章構成がタガログ語で、得意なフレーズだけが英語、あるいはその逆というパターンもある (※3)。

 このタグリッシュを聞く度に、筆者はフィリピン人のタガログ語に対する意識(※4)を疑問に思う。これは、次に述べる「ローカル」という概念と関係している。つまり「インターナショナル」な言語としての英語と、「ローカル」な言語としてのタガログ語という側面である。

>>次へ

-------脚注---------

  1. フィリピン共和国の公用語は「フィリピン(ノ)語」と「英語」であるが、実際住んでいて「フィリピン語」という言い回しは聞かないため、「タガログ語」と表記する。
  2. 例えば在比華人は、3世くらいになると、タガログ語のネイティブスピーカーであり、日常会話には、タガログ語を用いる。しかし、同時に彼らは中国語を話し、自分がフィリピン人であるとは考えていない場合がある。もっとも、これは筆者が出会った人々の例であり、フィリピン人化する華人、その他の外国籍を持つ人々もいる。
  3. 通りすがりで聞いた会話の例を挙げる。"If you want, sabay na-lang tayo" 「(英)もしよかったら、(タ)ご一緒に」前半部分のフレーズが英語で、後半がタガログ。携帯電話で話している状況で "Where ka na?" 「(英)どこ(タ)ですか(あなたは)?」。単なる英単語の借用というレベルではないことがわかる。
  4. もっとも、タガログ語自体、フィリピン全土で話されているわけではないので、全てのフィリピン人がタガログ語を母語と感じているわけではない
  5. 投稿者 MMG : 11:33 | -