3. "Local"という語彙が持つ脈絡
図6: Happy Fiesta (ハッピー・フィエスタ) Plaza Del Pan Manila City (2003.5.18) Del Panのフィエスタで行われたダンス・コンテスト"Ati Hatin Festival Competition"。通常"Ati Hatin"自体は1月に行われるらしい(※1)。画像はコンテストに出場したバクラ(※2)の人々だけで編成されたチーム |
>>Space ALC 英次辞郎の検索結果 "Local"
1) 「輸入製品」に対する「ローカル」
"Local"という語彙は"Import bland"「輸入製品」に対する自国内製品をあらわす際に、しばしば用いられる。国産製品をあらわす"Local"は「安い」「(輸入製品に比して)正規なものでない」「(輸入製品に比して、性能やデザインが)あまりよくない」といった意味が暗に含まれることが多い (※3)。
これは、製品にだけではなく人間にも適用される。"Local Employee"は「現地採用」「(主に外国人雇用者に対する)フィリピン人従業員」などをあらわし、省略形で"Local"と呼ばれたりする。この呼称は、状況によって「給料が安い従業員」といった、悪い意味になる場合がある。ちなみに"PBA (Philippine Basketball Association)"「フィリピン・バスケットボール協会」というプロ・リーグでは、外国籍の助っ人選手を「インポート」と呼ぶという記述が見られた(※4)。
2) 地理的な"Local(MMGカテゴリ「内務・地方政府省」)"
メトロ・マニラは首都圏として、それ以外の地方と区別される。それ以外の地方は、"Province(プロビンス)"と呼ばれ、これらは政府の管轄上"Local Government"「地方政府」に位置づけられる。
3) 下位行政単位としての"Local"
"Local Government"という行政区の概念は、上記の「(地理的な)メトロ・マニラ以外」をあらわすと同時に、メトロ・マニラ内にも適用される。
メトロマニラ内におけるこの概念はCity、Municipal、Barangayなどの地方政府に適用される。つまり「メトロ・マニラの内と外」という地理的な概念ではなく、行政における縦割りの単位で、より下位のものを"Local"と考える。メトロマニラという首都圏の下位にはCityやMunicipalというLocal Governmentが存在し、Cityの下位にはBaragngayというLocal Governmentが存在する。
4) "Local"と「タグリッシュ」
上記からわかるように、"Local"という語彙は、輸入製品に対して「あまりよくない」「正規なものではない」という負のイメージを持つことがわかる。この脈絡で「タグリッシュ」を眺めてみると、"Local"なタガログ語、"International"な英語という図式が見える。"Local"なタガログ語に対し、電化製品に見るような負のイメージが付加され、"international"な英語を使いたい、あるいは、それに聞こえるように会話をしたいという意識が垣間見える。
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-------脚注---------
- Bakla "An effeminate or homo sexual man; being effeminate." 「女性のような、あるいはホモセクシャルな男性。女性的であること。(筆者訳。"effeminate"という語彙は同辞書の記述)」L.English (2001) "Tagalog-English Dictionary" p.105.
- 例えば電化製品を買いに行った際、店員にフィリピン国産製品を指さし、値段や性能について尋ねても、あまり積極的に説明はしたがらない。反対に、日本の家電、欧米の有名家電メーカーのそれについては、聞いてもいない性能について丁寧に説明し、そのブランド名をアピールする。
- 天野郡壽「国技としてのバスケットボール─フィリピンのスポーツ興業─」、平井肇編(2000)『スポーツで読むアジア』p.94.
投稿者 MMG : 11:46 | -