(3) プレイスタイル

図 12: 半裸、ビーチサンダルでのプレイ
Angel Linao St. BRG743 Zone 80, Manila City
(2003.2.25)
 彼らのお決まりのスタイルは、底のちびたビーチサンダル、場合によっては裸足と、半裸かTシャツに短パン。彼らはほとんど無尽蔵と言ってよいスタミナでゲームを続ける。しかし、できれば彼らもNBAのレプリカ・ユニフォームを着て、ナイキのバスケットシューズを履きたいのである。

 個人の技術は、日本でいうと高校で部活動としてバスケットボールをプレイしている学生くらいか、誰をとっても巧い。しかし、場所的制限があるからか、3 on 3だからか、最初からそういうことを考えていないのか、連係プレイで得点というのは、あまりみない。2本くらいのパスでシュートまで持っていく。およそ個人技で何とかして、派手に決めようというスタイルが多く、ドリブルで突入して、囲まれたら味方にパスというスタイルが多いという印象がある。


(4) 路地裏からプロ選手へ
 路地裏のプレイヤー達が、PBAのスター選手になるというサクセス・ストーリーは、勿論、あるにはある(※1 )。ただし、ブラジルのサッカーのようなサクセス・ストーリーを生み出す仕組みは、まだ整えられていないので、PBAのドラフトや、その前にある大学のセレクションなどの舞台に立つということ自体の可能性が、極めて低いことは想像に難くない。


・ "Inter Barangay Tournament"
図 13: 支給されたユニフォーム
写真からは分かりづらいが、背中に市長Lito Atienza、胸には弟Kim Atienzaの名がプリントされている。
(2003.5.20)
 路地裏のゲームを文化として誇り、国内リーグが彼らに着目すれば、この国のバスケットボール、ひいてはスポーツ文化は、色々な意味で面白くなると思われる。これらの試みは、少しずつ始まっておりInter Barangay Tournamentなども開催されるようになった。
 2003年5月20日、筆者は偶然この大会の予選を行っているところに通りかかった。同大会はManila市長Lito Atienzaが主催し、全選手に、無料でユニフォームが支給された。全バランガイをブロックに分け、リーグ戦を行い、各ブロックの勝者が決勝リーグに残るという形式であった。
 勝ち負けというよりも、ユニフォームを着て、そういう舞台に立つことに興奮しているようで、この時ばかりは皆、バランガイの予算で購入したのか、お揃いのバスケット・シューズを履いて「よそ行き」の格好になっている。3 on 3に慣れているせいか、いきなりオールコートのゲームに臨む子たちは、どうゲームを進めてよいのか分からない状況も時々見受けられた。残念ながら、この大会については、詳細を把握できていない。

・ 「ローカル」の文化
 大会開催の目的自体は、健全な青少年の育成やBarangay間の協調などであるが、支給されたユニフォーム全てに、市長とその弟の名前がプリントされているなど、多少、政治的な匂いもする。しかし、回を重ねていけば、スカウトも見に来るようになり、路地裏からスターダムへの道が開けてくるように思う。
 もっとも、これが加熱すれば、どの国でも見られるスポーツのプロ化に伴う弊害が出てくるだろう。しかし現在は、その予備的段階であり、「正規なものではない」「ローカル」な立木のゴールが、「格好良いもの」として大きくクローズアップされる時代が来れば、大衆文化として非常に興味深いものとなるだろう。


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-------脚注---------

  1. PBAのDanilo Ildefonso選手は、貧しいPangasinan地方の家庭から、PBAでMVPを獲得するまでの成功を収めた。
    ※放送局ABS-CBNの"Maalaala Mo Kaya"という番組では、彼の生涯をドキュメンタリーとして放映
    Philippine Entertainment Manila (P.E.M)に、上記番組の日本語レビューあり。

  2. 投稿者 MMG : 11:52 | -