2007年4月8日

聖金曜日

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写真、文章: 美山 治 (ミヤマ オサム)
Photo & Text: Miyama Osamu


 2007年4月7日午前7時35分、Makati(マカティ)のオフィスへ向かうためPasay (パサイ市) Malibay (マリバイ)のEDSA沿いでバスを待っていた。(Malibay周辺の地図を見る。)Holy Week (聖週)ということで人通りも無く、車もほとんど通っていない。MRT3も運休しているようだ。街に出てもコンビニエンス・ストアや一部のファーストフード店などを除き、ショッピングモールなどは閉店している。日頃、人があふれかえる街を見慣れている私にとって、ゴーストタウンと化したMakatiはなかなか壮観だ。

 話を戻す。バスを待っていると、東の方からバランガイ・ポリス(*1)と思わしき人々がサイレンを鳴らしながらEDSAをトライシクル(*2)でゆっくりと逆走してきた。ふと振り返ると私の背後にはPasay 市警の警官が1人でバイクに腰掛けている。Holy Weekなのに駆り出された不満がありありとわかる眠そうな目でサイレンの聞こえてくる方を眺めている。その時は、ああ葬式か、ホーリー・ウィークなのに大変だなあと思っていた。実際これはお葬式の時に出くわす光景で、親族、周辺住人が教会に向かうため、その時だけは道交法無視でEDSAを行列で逆走できる。もちろん、この逆走行列は上にある通り、警察などの交通整理、監督のもとで行われる。ハイウェイ逆走をおおっぴらに行える非日常性からか、上で触れたバランガイ・ポリスなどは喜々とした顔でサイレンを鳴らしまくっていることが多い。人が亡くなったのに喜々としているのはなんだか不謹慎な気もするが、まあある種お祭り的な気分があるのだろう。

 話がそれた。お葬式だと思っていたら、なにやら白装束の人たちが宗教的な旗を掲げつつ粛々とこちらへ向かって歩いてきた。どうやらお葬式とは違うみたいだ。その背後には十字架を持ったキリスト像の山車が登場した。いつもは排気ガスと散らかったゴミ、立ち小便の匂いとバスが鳴らすヒステリックなクラクションが充満しているEDSAなのに、しんと静まり返った通りを朝日を背にして行進してくる一群は、いつものEDSAとは違う何やら神聖な緊張感を作り出していた。あらら、なんだろうこれ。ホーリー・ウィークだしなんかの年中行事だなこれは、と思っていたら通勤用のバスが来てしまった。通っているバスが少ないので乗り損ねると会社に遅れるかもしれない。インタビューは行えず、そそくさとバスに乗り込んだ。バス内はガラガラで、渋滞が無いせいか切符売りのおじさんもハイテンションだ。

 翌日の夜、CNNだったか(失念)のテレビのニュースを見ていると、エルサレムでこれと同じような儀式を行っているのが映った。もちろん規模は全然違うが、キリスト像の山車を担いで粛々と行進する光景は昨日に見たものと同じだ。ああ、これがオリジナルか。テレビの解説に拠れば"Good Friday (聖金曜日)" というそうだ。キリストが没した3日後に蘇るという例の復活祭(イースター)前の金曜日に行われるとのことだ。日頃フィリピンっぽくない場所をうろうろしているので、こういうのに出くわすと下町ってやっぱりいいなと思った。

-------脚注-------
*1: バランガイ (Barangay)とは地方政府(自治体)の最小単位。日本でいう村に近いコミュニティー。バランガイ・ポリスはこの自治体が管轄する警察。詳しくはこちら
*2: トライシクルはオートバイの横に乗客用のサイドカーをつけた乗り物。近距離を移動する際に使用される。
-------参考リンク---------
Wikipedia 「聖金曜日」の解説
クリスチャン・トゥデイのニュース「聖金曜日 エルサレムに巡礼者たち集う」



投稿者 MMG : 06:42 | - | |