2013年11月6日

EMSを使ってみた。(その4)

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文章、写真: 美山 治 (ミヤマ オサム)
Text & Photograph: Miyama Osamu

【なんか揉めてる】
 ドアを開ける直前、ちらりと見えたのが各国通貨のレート表。「あ、お金の話。税金だ。」とピンときた。中に入ろうとすると怒りながら出てくるフィリピン人の青年とすれ違った。お金持ちの子だなあという風体で、おしっこ臭いこの場所にはちょっと似つかわしくない。追いかけるようについてきた係の人が「Xboxだろ。それくらいするさ。」みたいなことを言っていて、青年は「Xboxじゃねえ。プレステだっ! これでいいんだろ。」と言いつつ500ペソ札をごそっと財布から抜き出して、その係の男に手渡した。「外で煙草吸ってるから領収書はそこに持ってきて。荷物はオレが持ってくから。」。係の人も彼の剣幕にたじろいで及び腰だった。今どきプレステなんか海外から郵送しなくても国内で買えるだろうに、なんか限定品なのかなあと思いつつ部屋に入った。でもあの財布から取り出した金額(多分2000〜3000ペソ)から察するに自分も用心しなければ。

【課税こわい】
 部屋に入るとギギーッギギーっと音が聞こえた。こういうところに来るとまだドットプリンタが生きている。4つの事務机があり、各々役人さんが座っている。1つは精算用のようだ。どのデスクに行けばいいのかわからないので、真正面の人のところへ行った。彼女はビスケットをかじりながら面倒くさそうに無言で隣の机を指さした。ビスケットの粉がポロポロとテーブルに散らばっている。ビスケットは大事だ。業務の邪魔をしてすまぬ。隣のデスクへ。

 書類を渡すと彼女は何かのレート表を見ながら何やら計算を始めた。説明は一切なし。しばらくすると請求書をつきだして、「これをあそこで払って」と顎で精算用のデスクを指した。さすがに料金も請求内容も一切説明なしは無いだろうと思い 「これは何の金額ですか?」 と尋ねると、いきなりスピーチが始まった。こういうのはまともに相手しない方がいい。「我がフィリピン共和国政府の入国管理では、いかなる外国製品にも関税が。。。」。ああ、やっぱ税金か。え? 入国管理? あれ、ここ郵便局じゃなかったっけ? スピーチを無視しながら金額を見るとなんと3764ペソ。Yahoo当日換算で 8585.77円。はあ? EMSで荷物を送る際に記入した内容物のおおよその価格「16000円」の約半分だ。課税率約50%。恐ろしすぎる。

 ここで疑問が。炊飯器は税金かからずにダイレクトに届いた。さきほどのスピーチ冒頭で「いかなる外国製品も "ANY KIND OF foreign products"」とおっしゃってたが、炊飯器はなぜ非課税。。。と聞こうかと一瞬思ったがやめといた。「なに? それはいけません。今すぐ炊飯器と領収書を持ってここに戻ってきてください。課税します。それまでこのベッドシーツはお渡しできません。」とか言いいはじめたら目も当てられない。この部屋で全てのことを決定できるのはこの人達だ。

【またなんか揉めてる】
 スピーチが続いている。それを聞くふりをしながら後ろのデスクの会話が気になっていた。椅子に座り直すふりをして横目でちらっと見ると若いフィリピン人女性が年配男性の役人に食って掛かっている。「彼は私にギフトを送ってくれたの。もう日本で送料も払っているのよ。多分2000ペソくらい。なんで私がまたこんなに払わないといけないの?」。係の男性は「税金の決まりがあるからしょうがないんだ」 「決まりは決まりだ」ということを繰り返し説明していた。

 もうちょっと成り行きを見守りたかった。数十秒に渡る税金スピーチが終わりそうだったので、デスクに飾られている結婚式と思わしき写真を指さして聞いた。「これって若い時のやつですか?いい写真ですね。」。結婚式の思い出話が始まった。成功だ。

 背後の話に再度耳を傾ける。女の子は涙声になっている。係の男性も困っている。「私、そんなお金ない。無理です。もういいです。」といって残念そうに席を立った。無念だと思う。日本の彼氏からギフトが送られてきて喜び勇んで取りに来たらとんでもない額を請求されたのだろう。

【精算】
 とりあえず 「この金額はおかしい」 とかゴネてもしょうがない。後ろのデスクの話の内容もわかった。引き伸ばしのための結婚式の思い出話はもう必要ない。嬉々として思い出話をしているのを無視して無言で席を立つ。ドア近くのデスクでちゃっちゃと精算。「これで全部終わり?」 とレジ打ちをしてる人に聞くと 「全部終わりです。」 とのことなので多分まだ終わりじゃない。荷物のところまで行って領収書を見せると 「ここにサインをしてください。」 と請求書を出された。やっぱ、まだあんだ。。 手数料の50ペソを請求された。炊飯器を受け取った時の請求書と同じフォーマットのやつだ。ああ、これでやっと終わりだと悟った。この請求書は最終受け渡しのやつだ。 ものすごく疲れた。帰りのタクシーが一瞬で拾えたことだけがこの日唯一の救い。家に帰ってまったりしてたら隣のバランガイが大火事になって停電。なんかもうホント大変な一日だった。(隣のバランガイが火事を読む。)


受領人の名前が "OJAMA (お邪魔) MAYAMA" に。はいはい。お邪魔しました。

【まとめ (推測含む)】
1. 多分、税金の基準は発送の際に日本で記入した物品の金額だと思う。ベッド・シーツは16000円。炊飯器は6000円と記入した。
2. 「EMSを使ってみた。」の「その2」から「その4」までを完全にスキップして段ボール箱10個分くらい持ち帰ったご婦人とその手下5〜6名がいた。いいなあ。
3. 過去の経験から書類は普通に届きます。贈答用には使用しないほうがいいかも。
4. 荷物置き場は掃除したほうが良い。
5. ビスケットは大事だ。

----参考リンク----
1. 日本郵政国際郵便 (EMS)公式サイト
2. フィリピン郵便局公式サイト (PHLPOST)
3. Philippine EMS公式 Facebook



投稿者 MMG : 23:42 | - | |